保存管理のポイント
さまざまな酒類と嗜好性食品、飲料に共通する保存管理のポイントとして、
「光の遮断」「適切な温度で保存管理」「適切な湿度で保管」「振動・衝撃を与えない」「匂いの強いものと一緒に保管しない」といったことがあげられます
「光の遮断」
太陽光や、蛍光灯などの紫外線を含む光源の使用は避けましょう
光の入らない場所での保存仮が理想ですが、必要な場合はLEDや白熱球などの使用が望ましいです
「適切な温度で保存管理」
高温の場所では、熱の影響により変化や風味の劣化が生じます
それぞれの酒類に合った適温で保存することが重要です
例えば、ワインは低温すぎると熟成が極端に遅くなったり、澱が生じやすくなったりします
「適切な湿度で保管」
ワインなどのコルク栓を使用した酒類を保存管理する場合は、コルクが乾かないようにするために適度な湿度が必要です
チーズ、茶類、シガーなどにも適切な湿度が必要です
「振動・衝撃を与えない」
炭酸ガスを含む酒類は振動・衝撃を与えると噴きこぼれや瓶が破裂する可能性があるので注意が必要です
「匂いの強いものと一緒に保管しない」
コルク栓を使用した酒類や、シガーなどは匂いを吸着しやすいので、匂いの強い食品類と一緒に保存しないようにしましょう
各酒類と嗜好性食品の保存管理
日本酒は、品質が非常に変化しやすいため、特に光や熱に留意しなければなりません
理想の保存温度は5℃~10℃、生酒の場合は5℃以下、中には0℃以下で保存しなければならないものもあります
ワインは、品質が非常に変化しやすいです
コルク栓を使用したものや、長期熟成させるものが多いことから、特有の保存管理の理解が必要です
理想の保存温度は12℃~16℃、コルク栓を使用したワインの場合の理想の湿度は60%~80%です
ビールは、品質が非常に変化しやすいです
特に炭酸ガスを含むことから、開栓後の保存は困難です
理想の保存温度は5℃~10℃、低温すぎる場所での保存は濁りの原因となり見た目が悪くなる可能性があります
焼酎・ウィスキーなどの蒸留酒は、醸造酒に比べてアルコール度数が高いことから、保存性が比較的高いです
理想の保存温度は12℃~16℃、20℃以上の場所で保管すると香気成分が低下して劣化臭の発生原因となります
開栓後は空気に触れない対策が必要です
コーヒーは、豆の状態のまま、匂いの強いものとは別にして低温で保管します
お茶は、無臭の缶に入れて湿気を防ぎ、直射日光が当たらず風通しの良い場所で保管します
どちらも匂い成分を吸収しやすいという特徴をもちます
また、コーヒー豆は挽いてしまうと風味がすぐに失われるので、なるべく豆のまま保存するようにしましょう
チーズは、賞味期限の認識が重要です
光が当たらないようにし、適度な湿度の環境下で、匂いの吸着や衛生管理に気を付け、重みや衝撃が加わらないように保存します
保存温度は、5℃前後が基本で、タイプによる特性も考慮します
シガーは、匂いの吸着に留意し保管します
保存温度は20℃前後、湿度は70%前後が適切です
提供温度による変化
酒類の提供温度を設定する際のポイントは、「酒類の香り」「酒類の味」「飲み口」、この3つを生かす温度帯に設定することです
同じ酒類でも、提供温度を変えると香味の感じ方も異なるため、冷した場合と、温めた場合で、どのように香味が変化するかを理解しましょう
飲用方(割り方)の特徴
アルコール度数の高い、焼酎やウィスキー、ブランデーなどの蒸留酒には様々な割り方があります
ストレートは、「生(=き)」とも呼ばれる飲み方です
蒸留酒本来の香味が明確に感じられる場合と、アルコールの刺激により分かりにくくなる場合があります
また、アルコールの強い粘性でとろみのある飲み口にもなります
パーシャルショットは、酒類を氷点下で冷やすスタイルです
極端に冷やすことでとろみが増し、アルコールの刺激も弱まり、甘く感じられます
ウォッカなどのアルコール度数の高いスピリッツに用いられます
オンザロックは、グラスに氷と酒類を入れて飲用するスタイルです
飲み口が引き締まり清涼に感じられます
水割りは、氷と水で酒類を薄めて作るタイプと、酒類と水を同量で割るトゥワイスアップというスタイルがあります
トゥワイスアップは、氷は入れずに常温、または冷えた水で割るため、酒類の持つ香りや味わいの特性が良くわかる飲用方法です
お湯割りは、割る比率によって、香味の感じ方が異なります
焼酎を例で、焼酎6割、お湯4割の場合は重厚な香味に、焼酎が4割でお湯が6割の場合は軽快な香味に感じられます
酒器の材質と特徴
酒器について考える際は、「酒類の色合いから素材を」「香りの特性から形状を」「飲用温度帯から大きさを」「酒質の濃淡から口径」をそれぞれ選択します
「酒類の色合いから素材を」
カット入りの透明グラスは、透明感を強調できます
また、濁り酒のように固形物を含むものは美しく見えません
「香りの特性から形状を」
湾曲性の高いグラスは、より香りを感じやすい形状とされています
一方直線形のグラスは香りを感じにくいです
その為、香りの弱い酒類が適合しますが、あえて香りを引き立たすために湾曲性の高いグラスを使用する場合もあります
「飲用温度帯から大きさを」
冷たい温度で提供すべき酒類なら、小振りの酒器が冷えた温度状態のまま飲用できます
「酒質の濃淡から口径」
口径の小さい酒器は、少しずつしか口内に入らない為、味わいを軽快に感じやすいです
口径の大きいものは大量に口内に入るため濃淳に感じやすいです
酒器の材質が異なると、テクスチャーの感じ方が異なります
また、材質の違いにより外観の見え方が異なったり、泡立ちの度合いが異なったりします
土製酒器の特徴は、吸水性があり、厚みのあるものが多いです
質感は柔らかく、温かみのある印象を与えることが出来ます
石製酒器の特徴は、吸水性がなく、表面がなめらかで涼しげな印象を与えるものが多いです
質感は硬く、絵柄の入ったものは華やかな印象を与えます
ガラス製酒器の特徴は、吸水性がなく、中身が見えることで涼しげな印象を与えます
質感は非常に硬く、さまざまなサイズがあり、口径部分は非常に薄いです
形状により、ソーダガラスとクリスタルガラスの二つに大別されます
木製酒器の特徴は、吸水性があり、軽く、素材の香りを感じさせるものが多いです
質感は非常に柔らかく、温かみのある印象を与えます
金属製酒器の特徴は、重量感があり非常に高価な印象を与えることです
また、熱伝導にすぐれ、腐食が少ないです
その洗い方大丈夫?飲食店向けグラスの洗い方
酒器全般に共通する洗浄方法のポイントとして、
・油分が付着した食器類などと一緒にしない
・酒器専用のスポンジやブラシを使用する
・吸水性が高く、羽毛が出にくい柔らかな布で吹き上げる
・完全に乾燥させてから保管する
といったことがあげられます
土製、石製、磁器製
基本的に中性洗剤を使用し専用のスポンジで洗浄することが望ましいです
また、徳利などは内部が見えにくく、入口が狭く洗浄しにくいなどの問題を抱えているため、熱湯で十分にすすぎ洗いするといった洗浄方法が望ましいです
中性洗剤を使用した場合は、内部に洗剤が残らないように、より長いすすぎ時間をかけ、十分に乾燥させる必要があります
ガラス製
中性洗剤を使用し専用のスポンジで洗浄することが望ましいです
水垢がひどいときにはクエン酸を使用したり、油汚れがひどいときには重曹を使用したり、グラスの表面が傷つかない程度の研磨効果がある塩を使用したりします
ビールに使用するグラスは、洗浄が不十分だと泡立ちが粗くなり、香気飛散が早くなることがあるので、より細やかな洗浄が必要です
木製
木製酒器は吸水性が非常に高いため、基本的に50℃~60℃程度の湯でしっかりと洗い流すのが望ましいです
熱すぎると歪みの原因になります
中性洗剤は汚れがひどいときにだけ使用します
すすぎ後はカビが発生しないように十分に乾燥させます
金属製
錫(すず)、チタンなどの金属製酒器は、中性洗剤を使用し専用スポンジで洗浄するのが望ましいです
錫(すず)は金属の中でも融点が低いため、ぬるま湯を使用する方が無難です
酒類と料理の組み合わせ
酒類と料理との組み合わせの提案は、多くのお客様から求められるサービスです
お客様の嗜好は千差万別で、全てのお客様に評価される相性を提案するのは容易なことではありません
組み合わせの考え方や手法を身につけ、有用なサービスとして提案していくことが飲食のプロフェッショナルの務めです
飲用シーンを合わせる
居酒屋やファーストフードのような手頃な料理ならば、安価に購入できる酒類と組み合わせるなど、「気軽」という飲用シーンを合致させる
食事スタイルを考慮
一皿に異なる数種類の料理が盛り込まれる、日本料理では、相性の幅が広い日本の酒が重宝されます
一方、西洋的な食事も定着している現在では、前菜や主菜といった各料理に合わせた提案も求められます
旬の食材による料理との相性を考慮
季節感あふれる料理は日本料理の基本です
そのため、季節ごとの食材の種類や特徴、それらに適した調理法などの見識を深め、料理と酒類の相性を考慮する必要があります
提案の方向性を明確にする
食事において料理を主役とし、料理を引き立たせる「食中酒」の提案を望むお客様が増えています
その逆に、酒類を主役とし、それを引き立たせる肴やつまみ類の提案が求められる場合もある
どちらを主役とするかも大切な条件です
一般的に相性がいいとされる組み合わせには、「同調」「新しい風味を生む」「料理の脂成分を洗い流す」などがあります
同調には、「違和感がない」「一体化する」「バランスが良い」などといった表現があります
また、魚介類や海藻類などの生臭みを抑える組み合わせとして、特に原料に麹を使用する日本酒があげられます
相性が悪いとされる組み合わせには、「反発」「バランスの悪さ」などがあります
酒類単独、料理単独では感じない、不快な香り、食感、味わいなどが生じる組み合わせを反発といいます
参考文献:新訂 もてなしの基
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