【飲食の提供販売における問題点】と筆者の見解
飲食の提供・販売における消費者の満足を調査したところ、飲食業界、またその従事者に対する消費者の評価、信用、信頼面は決して高くない現状であることが判明しています
飲食業界がブラックだと言われ、どの企業も人手不足が蔓延しています
ブラック業界だと言われる要因は、長時間労働、低賃金のイメージが極めて強いからだと思います
私も、現場の一線で店長をしていた経験がありますのでこれは痛感しています
この理由は、この業界が圧倒的に薄利多売な業界だからです
参入障壁も低いため、価格競争にも陥りやすいです
飲食材原価、人件費、水光熱費、家賃、備品消耗品費、広告宣伝費などが主にあります
飲食材原価などのお客様に直結するコストを低くしようとすると、顧客離反につながりますので、当然しっかり管理しなければなりません、
ならば、長い時間お店を開けて、売上を最大化し、人件費はなるべくローコストで運営する、これが利益を上げるための鉄則になります
しかしこれでは、働く従業員は疲弊し、不満も大きくなります
昨今のSNSでのバイトテロ動画や、たまに会う横柄な態度の店員さんが仕上がる背景にはこういった出来事が絡み合っているのではないかと思います
では、どのようにしたらこの構造が変わるのか
それは、プロフェッショナルな付加価値を演出して、お客様からしっかりとした対価を頂くということが一つではないかと思います
料理3品とドリンク2杯飲んで3,000円を払ったという感覚ではなく、そのお店の食体験に対して3,000円を払ったというものにしていくのが必要です
その為には、そこで働く人の人間力や専門的知識、プロフェッショナルな技術は必要不可欠です
またこの業界に従事する人たちの環境をより良い方向へ変えていくためには、この研鑽が必要なのです
自分の環境は自分で努力して掴んでいくしかありません
消費者が物価的価値よりも、人的サービスに付加価値を求めているということの意識が必要です
また、そのニーズに応える対応力を身に着ける必要があります
【飲食のプロフェッショナル】
飲食のプロフェッショナルとは、消費者の「食」のニーズに対して適切な付加価値を提供できる者をいいます
また、ビジネス面、社会的面での貢献も責務ですので、消費者目線でのセールスプロモーションの企画立案、実行なども求められます
持つべき心構えとしては
お客様の飲食に対するニーズは10人いれば10通りの満足の形があるため、
それらに対応するべく常に「知識の向上・更新」「能力の向上」が求められます
また、最も必要な能力は洞察力です
お客様それぞれのニーズや瞬間的に起こる心理の変化を見抜き、培った知識や技術を複合し提案、行動をすることです
【酒類の基礎知識】
酒類全体、さらには飲料全般の商品特性を理解することは、様々な提案を行う上で重要です
お酒全般に共通する商品特性として
- 1.嗜好性が強い
- 2・原料、製法、生産地域などにより、バラエティが極めて豊富
- 3.的確な提供を行わないと、その特性を生かせない
- 4.良くも悪くも身体に影響がある
- 5.品質変化しやすいため、適切な保存管理が必要
- 6.各民族や文化を代表する「文化の粋」として位置づけられる
といったものがあります
【製法上の分類】
酒類は主に「醸造酒」、「蒸留酒」、「混成酒」の3つに分類されます
醸造酒とは、果実や穀物を原料とし、それを酵母によってアルコール発酵させて造る酒類のことです
醸造酒のアルコール度数は一般的に5%~15%程のものが多く、食中酒に適しています
醸造酒の起源は、紀元前3000年頃とされ、現在のイラクにあるメソポタミア地方でワインやビールが造られていたことが記録として残っています
日本では縄文時代の土器からヤマブドウの種が見つかったことから、果実酒が醸造酒の起源と考えられています
蒸留酒とは、アルコール発酵によって造られた醸造酒を蒸留して造る酒類のことです
水の沸点は100℃であるのに対し、アルコールの沸点は78.3℃という、沸点の差を利用して生み出されます
醸造酒のアルコール度数は、元の醸造酒のアルコール度数よりもはるかに高く造られます
食前酒、もしくは食後酒として単独で飲まれる他、水や炭酸水で割りアルコール度数を下げて食中酒とするなど、用途は幅広いです
蒸留酒が本格的に造られるようになったのは、12~13世紀頃とされています
特にスペイン、フランスなど欧州で、ペスト予防のために薬として用いられていましたが、口頭伝承による起源とされています
文献上の最古は13世紀頃の中国雲南省です
また日本では1477年頃に造られた泡盛が蒸留酒の最初だと考えられています
混成酒とは、醸造酒や蒸留酒を原料として、薬草、果実、香料、甘味料などを混ぜ合わせたり、浸漬させたりして造った酒類のことです
混成酒はそのまま飲用することもありますが、様々なカクテルに使われることが多いです
混成酒の原料は、ベースの酒類、芳香性原料、補助原料の3つで、中でも芳香性原料は、混成酒の個性を決める重要な要素です
混成酒は、薬として飲まれていたのが起源とされていて、日本では、平安時代に中国から伝わった漢方薬を清酒やみりんに混ぜて飲んでいた屠蘇(とそ)が最初とされています
【発酵】
酒類をはじめ、嗜好性飲料・食品の多くは発酵飲料・食品です
発酵を理解することは、それぞれの製法や分類を理解することに通じます
また、日本の食文化には「発酵」が密接に関わっています
発酵飲料・食品に共通する特徴として
- 保存性が優れている
- 栄養価が高い
- 吸収・消化に良い
- 芳香や旨味が増す
といった特徴があります
身近なもので、酒、チーズ、ヨーグルト、味噌・醤油、酢、パン、お茶、納豆、鰹節、ぬか漬け、などが発酵飲料・食品としてあげられます
【発酵の歴史とメカニズム】
発酵食品の中で最も人類との付き合いが長いものの一つが酒です
紀元前3000年頃、現在のイラクにあたるメソポタミアで、ワインやビールづくりに関する記録を最初に、以降様々な酒類の記録が残されています
発酵の仕組みを科学的に解明したのは、オランダの科学者レーウェン・フックです
自ら製作した顕微鏡で醗酵に関する微生物の観察に成功し、発酵とは微生物によって生じる現象であることを明らかにしました
また、フランスの科学者ルイ・パスツールは、空気中に浮遊する微生物の働きによって発酵が起こることを実証し、「全ての生物は生物より発生する」という有名な言葉を残しました
【発酵に関わる微生物とその特徴】
発酵に関わる微生物とその特徴として、カビ、酵母、細菌、酵素があります
カビは、高湿度・高温を好み、古くから発酵に利用されてきました
その中でも発酵に欠かせないのが、麹カビ属です
主に日本酒、醤油、味噌などに利用される黄麹菌、主に焼酎に利用される白麹菌、泡盛に利用される黒麹菌などがあります
酵母は、自然界に約350種存在するとされています
アルコールと炭酸ガスを生み出すほかに、様々な香りを生成することが特徴です
細菌は、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌などに分けられます
乳酸菌は、発酵によって乳酸を生成する微生物です
ヨーグルト、キムチ、乳酸飲料、チーズ、漬物など、様々な発酵食品の製造に用いられます
酢酸菌は、アルコールに強い特徴があり、アルコールを酢酸に変換させるため、酢造りに利用されます
納豆菌は、枯草菌という最近に属し、主に納豆をつくり出すための菌です
酵素は、微生物をつくり出すタンパク質の総称で、生物ではありません
【アルコール発酵】
アルコール醗酵とは、酵母の働きにより、糖類がアルコールと炭酸ガスに変換されることをいいます
アルコール醗酵には、原料に含まれる糖類を使用する単発酵と、デンプンを使用する複発酵があります
複発酵には、糖化とアルコール発酵の工程を別々に行う単行複発酵と、この工程を一つのタンクで同時に行う並行複発酵の2種類の醗酵形態があります
【酒類が身体に与える影響】
酒類は食品、飲料の中でも身体への影響がとりわけ大きいです
酒類はリラックス効果、ストレスオフといった良い効果があるとともに、個人の許容範囲を超えた飲酒や短時間の大量飲酒などにより、害を及ぼすこともある
アルコール依存症などアルコールの負の側面や、飲酒に対する社会的な取り組みにも精通する必要があります
お客様に合わせた健康的な飲み方を提案することは、「飲食のプロフェッショナル」の責務です
【酒類に関連する法規・法令】
酒税法第2条では、「酒類とはアルコール分1度以上の飲料をいう」と定義されています
その為、日本ではアルコール分1度未満のものは、清涼飲料水として扱われます
酒税法上で酒類は発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の4つに分類され、さらに17の品目に細分化されています
「酒類の保全および酒類業の組合等に関する法律」では、ラベル表示等にも関わり、各品目における製法や品質に類する事項や、未成年者の飲酒防止や健康に関係する表示に関することなどが詳細に定められています
未成年者の飲酒や飲酒運転の根絶に向け、提供、販売前の確認と「絶対にさせない」という強い意志で接客に臨むことが重要です
参考文献:新訂 もてなしの基
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