ワイン概論【ソムリエ試験対策】

ソムリエ試験対策

ワインの特性

ワインとは、ブドウ果実を原料として醸造した酒類のことです

ブドウはブドウ糖や果糖などの糖分を含むため、穀物を原料とする酒類とは異なり、デンプンを糖化する工程はありません

その為、ワインは原料となるブドウの性質を強く反映します

ブドウ果汁の糖分を酵母のアルコール発酵によりエチルアルコールに変えた飲料の化学式です

この化学式を提唱したのは、ジョゼフ・ルイ・ゲイリュサック

ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック - Wikipedia

酵母によるアルコール発酵のメカニズムを解明したのは、19世紀の生化学者ルイ・パストゥールです

ルイ・パスツール - Wikipedia

「良いワインは良いブドウから」ブドウの個性を決定する自然条件が、ワインに大きな影響を及ぼします

ワインの中の主な有機酸としてブドウに由来する酸は、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸

発酵により生成する酸は、コハク酸、乳酸、酢酸です

ワインの香りは、原料ブドウに由来する第一アロマ、発酵工程で酵母や乳酸菌によって生成される第二アロマ、発酵終了後の熟成などによって生じる第三アロマに分けられます

赤ワインに含まれるレスベラトロール(ポリフェノールの一種)は、血栓症予防や抗がん作用があると報告されています

ワインの分類

ワインは、醸造法の違いによって次の4つに分類されます

スティルワインは、ブドウ果実を発酵させ、二酸化炭素による発泡性を呈(てい)さないワインです(一般的にはアルコール9~15度程度)

スパークリングワインは、発泡性を有したワインのことです

日本の酒税法で「発泡性を有するもの」とは「20℃におけるガス圧が49Kpa(キロパスカル)以上の炭酸ガスを含有する酒類」とされています

一般的にスパークリングワインの名称で通用するものは、3気圧以上のガス圧をもったもの、それ以下のガス圧は、微発泡性にワインに区分されます

フォーティファイド・ワインは、醸造工程中でアルコール分40度以上のブランデーやアルコールを添加してワイン全体のアルコール分を15~22度程度にまで高め、味にコクをもたせ、保存性を高めたワインです

フレーヴァード・ワインは、ワインに薬草、果実、甘味料、エッセンスなどを加えて独特の風味を添えたワインです

EUでは、ワインは地理的表示付きのワインと地理的表示のないワインに大別され、地理的表示付きのワインはさらにA.O.PとI.G.Pに細分されます

ラベル表記の主な義務記載事項は、アルコール度数、原産地、瓶詰の業者名(スパークリングワインの場合は生産者と販売業者)

主な任意記載事項は、収穫年、原料のブドウ品種です

収穫年を記載する場合は、少なくとも85%その収穫年からのブドウを使用しなければなりません

単一のブドウ品種名を表示する場合は、そのブドウ品種を少なくとも85%使用しなければなりません

世界的ワイン産地における主な気候は、大陸性気候、海洋性気候、地中海性気候、山地気候があります

大陸性気候は、昼と夜の気温の日較差、夏と冬の気温の年較差が大きく、ブドウが十分に成熟する前に寒くなる年があり、ワインの品質は一般的にヴィンテージ(年)ごとに差ができやすくなります

海洋性気候は、海に近い地域で、風の影響で気温の日較差が少なく、一般的に降水量が多く、湿度が高くなります

年により秋が長く続き、気温の低下が緩やかに進むため、成熟期が長く続きます

その為、晩熟型のブドウに適しています

地中海性気候は、温暖で、夏は日照に恵まれ乾燥した気候になり、雨が少ないため病害も少なく、安定した成熟期を迎えることができます

山地気候は、平地に比べて気温が低く、天候の変化が大きく、風が強くなります

畑の位置や、傾斜の違いによって気温や日照量、降水量などが大きく異なります

ブドウとブドウ栽培

主なブドウ属は、欧州・中東系種のヴィティス・ヴィニフェラ、北米系種のヴィティス・ラブルスカです

ブドウ栽培に関する気温条件は、年間平均気温10℃~20℃、ワイン用ブドウ栽培では10℃~16℃が最適です

開花期は15℃~25℃、成熟期は20℃~25℃が望ましく、成熟期には一日の温度較差があるほうが良いと言われています

北半球では北緯30度~50度、南半球では南緯30度~50度の地域に、ほとんどのブドウ生産地が含まれています

日照条件は、育成期間で1,000~1,500時間で、水分条件は、年間降水量500~900mmと言われています

スティルワイン(赤・白・ロゼ)の基本的な醸造方法を見ていきます

赤ワインの醸造方法

  • 除梗・破砕

収穫した赤ワイン用の黒ブドウの果梗を取り除き、つぶします

(除梗の有無や程度は品種の個性により異なる)

酸化防止と、殺菌の為、二酸化硫黄を加えます

  • 主発酵

除梗・破砕したブドウの果汁、果皮、果肉、種子の混合物(=果醪 かもろみ)を木桶やタンクに入れて酵母を加えるか、付着酵母による発酵を待ちます

地域、収穫年によってシャプタリザシオンされることもあります

シャプタリザシオンとは、補糖の意味です

科学者のジャン・アントワーヌ・シャプタルに由来していて、ワインに甘味を付けるためではなく、アルコール分を高めることが目的です

  • 醸し(マセラシオン)

発酵が始まると、果皮から赤い色素のアントシアニンと、渋みの主成分タンニンが出てきます

発酵中タンクの果醪液を抜いて、タンク上部の果帽(かぼう)全体に散布する作業をルモンタージュといいます

タンクの容量が小さい場合には人力による櫂(かい)つき、ピジャージュを行うワイナリーも多い

それぞれ得られる効果は、酸素供給、糖分・酵母・温度の平均化、果皮・種子からフェノール類等の成分抽出が目的です

  • 圧搾

果帽の下のワインを抜き取り、残った果皮と種子を圧搾機にかけます

プレスワインは圧搾の程度により、いくつかに区分されます

ワイン自身と果帽の重みにより引き抜かれるワインをフリーラン・ワインと呼びます

  • マロラクティック発酵

マロラクティック発酵ではワインに含まれるリンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸と炭酸ガスに分解されます

ワインの酸味が和らげられ、まろやかな味わいになる

ワインの複雑性が増し、豊潤な香味を形成する

微生物学的に安定する、等の効果があります

  • 樽・タンク育成

発酵を終えたワインをオーク樽に移し替え、貯蔵庫で1~2年育成させます

その間、目減り分の捕酒、ウイヤージュを行います

また、木樽は使用しないこともあります

樽育成では、樽からの成分抽出、清澄化の促進、赤ワインの色調の安定、風味の複雑化などの効果が得られます

  • 澱引き(スーティラージュ)

育成・貯蔵中はブドウ果実由来の、ペクチン・ポリフェノール・酒石・タンパク質・酵母菌体などの混合物(=澱)が沈殿する為、上澄みを別の容器へ数回移し替えます

オーク樽の容量は225ℓのバリックと、228ℓのピエスがあります

※バリック4つ分(900ℓ)=トノー

  • 清澄化

ワインをさらに透明にする為、必要に応じて清澄剤を使用します

伝統的に使用されている清澄剤として、卵の白身、タンニン酸、ゼラチン、ベントナイトなどがあります

フランスのボルドー地方では、清澄剤に多くの卵の白身を使うため、黄身を使って作るカヌレというお菓子が有名です

  • 濾過・瓶詰

最後に濾過と瓶詰をして出来上がりです

白ワインの醸造方法

  • 除梗・破砕

収穫した白ワイン用のブドウの果梗を取り除き、つぶします

  • 圧搾

圧搾作業は、出来るだけ速やかに行い、果汁だけを抽出し、少量の二酸化硫黄を添加します

圧搾後の果汁には不純物が含まれているので、低温のタンクに入れて数時間おき、不純物を沈殿させるデブルバージュという作業を行います

  • 主発酵

上澄み部分の果汁に酵母を加えて発酵させます

発酵温度は20℃前後と赤ワインより低く抑え(30℃前後)、ブドウがもつアロマ成分が減少するのを防ぎます

  • マロラクティック発酵

ワインのスタイルにより、まろやかな風味を得るためマロラクティック発酵を行います

(ⅰワインの酸味が和らげられ、まろやかな味わいになるⅱワインの複雑性が増し、豊潤な香味を形成するⅲ微生物学的に安定する、等の効果があります)

  • 樽・タンク育成

樽やタンクに入れて育成させます

その間、バトナージュを行う場合もあります

バトナージュは、樽やタンクの中の澱を攪拌することで、酵母に含まれる旨味成分をワインに移行させる作業のことです

  • 澱引き・清澄化・濾過・瓶詰

澱引き、清澄化、濾過、瓶詰をして出来上がりです

ロゼワインの醸造方法

【セニエ方式】

黒ブドウを原料として、除梗、破砕して、果醪(かもろみ)をタンクに入れ、発酵の開始前または、醸しの初期にタンク下部のドレインを開けて、果醪の自重により流出した果汁を発酵させる方法をセニエ方式といいます

※赤ワインの醸造工程で、醸しを途中でとめる

【直接圧搾法】

黒ブドウを原料として、白ワインと同様にブドウを圧搾してから果汁を発酵させる方法を直接圧搾法といいます

※黒ブドウを使って、白ワインの醸造工程で造る

【混醸法】

黒と白のブドウを混ぜて発酵させる方法を混醸法といいます

※黒ブドウと、白ブドウを混ぜる

ブランデーの分類

ブランデーの酒税法での定義は、「果実または果実と水を原料として発酵させたアルコール含有物、果実酒を蒸留したもの、これにアルコール、スピリッツ、香味料、水を加えたもの」とされます

ブドウ原料のものには、フランスのコニャック、アルマニャックなど、ブドウの搾りかす原料には、フランスのマール、イタリアのグラッパなどがあります

コニャックは、フランス西部のコニャック地方で造られる、ブドウが原料のブランデーです

ブドウ品種、生産地区の分類、伝統的な蒸留法、熟成表示など厳しい規制があります

アルマニャックは、フランス南西部のアルマニャック地方で造られる、ブドウを原料としたブランデーです

白ワインを、アルマニャック地方の伝統的な連続式のアランビックで、ゆっくりと連続的に蒸留して造ります

ワイン概論からはソムリエ試験でも毎年何問か出題されます

範囲が広い印象がありますが、要点を素直に抑えれば確実に点がとれる内容ですのでしっかりと抑えていきましょう!

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