【地域・気候】
ローヌ渓谷のワイン産地は広大です
南北200キロメートル以上に及びますので、北と南の2つの地域にわけて、覚えるのがいいと思います
北は温和な大陸性気候で冬の寒さが厳しいです
平均年間降雨量は900ミリを超え、気温はブドウ生育期間で平均18℃程度
南は温暖な地中海性気候で冬はおだやかで夏は乾燥します
南ローヌでは、降雨量は700ミリを割り、生育期間の気温は20℃程度と高くなります
【主要ブドウ品種】
ローヌ渓谷のワイン醸造に使用されるブドウ品種は21種類と多いです
※全部覚える必要はありません
北部の主要ブドウ品種は、黒は主にシラー(=セリーヌ)、白は主にヴィオニエ、ルーサンヌ、マルサンヌが使用されています
単一品種のワインが多く、さわやかで繊細、ストラクチュアやミネラル感のある味が中心で、
中期から長期にわたる熟成能力があり、高い付加価値を持つワインが多くあります
南部の主要ブドウ品種は、黒はグルナッシュ主体で、シラー、ムールヴェードル、カリニャン、サンソーをブレンドして使用し、赤ワインとロゼワインが造られます
白は主にグルナッシュ・ブラン、クレレット、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエが使用されています
アサンブラージュ(ブレンド)のワインが多く、力強く、おおらかで複雑な味わい、
短期から長期の熟成能力があり、中程度から高い付加価値を持っています
近年では、新しい品種マルスランが赤ワインのブレンドに加えられることがあります
【特徴】
北ローヌのコート・ロティやエルミタージュ、南ローヌのシャトーヌフ・デュ・パプといった高級ワインで有名ですが、カジュアルなコート・デュ・ローヌが、この産地で最も多いワインです
また、赤ワインの比率が高く、AOC(原産地統制呼称)ワインの7割を超えます白ワインは1割程度です
気候は強力な北風のミストラルの影響を受けます
ミストラルは、フランス南東部に吹く地方風のことです
アルプス山脈からローヌ河谷(かこく)やデュランス川流域を吹いて加速度を増し、カマルグ周辺の地中海に吹き降ろす、寒冷で乾燥した北風のことです
ブドウのかび病被害を抑えますが、一方で樹勢(じゅせい)を削いで収量を低下させます
北ローヌは、ヴィエンヌ から南はヴァランスの間
南ローヌは、ヴァランスから車で1時間ほど南下したモンテリマールからアヴィニョンまでの間がおおまかな範囲です
【A.O.C.】
ローヌ渓谷のA.O.Cは、クリュと呼ばれる、ボルドーの村名ワインと同等
(単一畑表記も可能 但し、最高峰のコート・ロティから、カジュアルなリラックまで同一のクリュであり、産地による格差がかなりある)
のカテゴリーを頂点として、その下が広域地区や地区名のカテゴリーです
北部ローヌの主なA.O.Cは、
(右岸)
コート・ロティ
コンドリュー
シャトー・グリエ
サン・ジョセフ
コルナス
サン・ペレイ
サン・ペレイ・ムスー
(左岸)
クローズ・エルミタージュ
エルミタージュ
コート・ロティは、焼け焦げた丘という意味があります
その名の通り日照量が多く、夏の気温は非常に暑くなる地域です
赤ワインのみが認められていて、シラー80%以上の使用に、ヴィオニエ20%までの混醸が認められています
赤ワインのタンニンを和らげるために、白ワインの混醸が認められています
混醸は北ローヌで伝統的に見られる醸造方法です
コンドリューとシャトー・グリエはヴィオニエ100%で造る白ワインのみのA.O.Cです
コルナスはシラー100%で造る赤ワインのみのA.O.Cです
クローズ・エルミタージュは、ローヌ地方北部でもトップクラスのワインを生み出すとされているエルミタージュに隣接するA.O.Cです
ワインのタイプも、名前も似ていることからエルミタージュと混同されがちですが、品質、価格ともに異なっています
赤と白ワインのそれぞれが認められていて
赤は、シラー85%以上にルーサンヌとマルサンヌ15%までの混醸が認められています
白は、ルーサンヌ、マルサンヌで造られます
エルミタージュではヴァンド・パイユも認められています
ヴァンド・パイユとは収穫したブドウを陰干し(パスリヤージュ)し糖度を高めたあと醸造した甘口ワインです
ジュラ地方で多く生産されています(エルミタージュのヴァンド・パイユは45日以上陰干しを行わなければならない)
2010年以降製造中止になっており、現在では入手困難なデザートワインです
南部ローヌの主なA.O.Cは
(右岸)
コート・デュ・ヴィヴァレ
リラック
タヴェル
デュシェ・デュゼス
コスティエール・ド・ニーム
クレレット・ド・ベルガルド
(左岸)
グリニャン・レ・ザデマール
ヴァンソーブル
ケランヌ
ラストー
シャトーヌフ・デュ・パブ
ヴァケイラス
ジゴンダス
ボーム・ド・ヴニーズ
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ
ヴァントゥー
リュベロン
赤のみが生産可能なA.O.Cは
ヴァンソーブル
ラストー
ボーム・ド・ヴニーズ
それぞれ主要ブドウ品種はグルナッシュです
ラストーはV.D.Nも認められていて、V.D.Nは赤・ロゼ・白の生産が認められています
V.D.N.(ヴァン・ドゥ・ナチュレル)とは、ワインの醸造過程でアルコールを添加して、アルコール度数を高めたワインです
ぶどう果汁を発酵させている途中でアルコールを加え、熟成させます
液中のアルコール分が一定量を超えると酵母が働かなくなり、アルコール発酵が止まるため、ぶどう果汁の甘味が残ります
V.D.N.に使用されるぶどう品種は、ミュスカ種とグルナッシュ種の2つに大きく分けられます
一方、V.D.L. (ヴァン・ドゥ・リキュール)は、
まだ発酵させていないぶどう果汁にアルコールを加えてつくることをいいます
タヴェルは、グルナッシュ主体で造るロゼワインのみのA.O.Cです
1936年フランスのロゼのA.O.C産地として最初に認定された歴史を持っています
ジゴンダスは、グルナッシュ主体で造る赤、ロゼワインのA.O.Cです
ケランヌは2016年に認められた最新のA.O.Cです
【シャトーヌフ・デュ・パブ】
シャトーヌフ・デュ・パブは、フランス語で「教皇(PAPE)の新しい館(CHATEAUNEUF)」という意味です
14世紀に教皇ヨハネス22世がこの地に館を構え、ブドウ畑を発展させたことが由来となっています
ミストラルと呼ばれる乾燥した強い北風が吹き、ローヌ地方の中でも最も乾燥している場所です
小石が日中の熱を蓄え、夜間にブドウを温めます
土壌は白亜紀の石灰質層を覆う砂質の土壌、赤い粘土の土壌、ローヌ川が運んできた玉石(たまいし)の土壌の3つに分けられます
テロワールや品種構成により、滑らかなタイプから力強いタイプまで様々なタイプの赤ワインが生産されます
また白ワインも少量生産されています
認定されているブドウ品種は13品種です
黒ブドウは、グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、サンソー、ミュスカルダン、
クーノワーズ、ヴァカレーズ、テレ・ノワールの8品種
白ブドウは、グルナッシュ・ブラン、クレレット、ブールブラン、ルーサンヌ、ピクプール、ピカルダンの6品種(グルナッシュとグルナッシュ・ブランを1として13種類)
13品種全て覚える必要はないので安心してください!
グルナッシュは約80%もの栽培を占めており、100%グルナッシュで仕立てる生産者もいますので特に重要です
白ブドウのマルサンヌ、ヴィオニエ 黒ブドウのカリニャンは、使用が禁止されています
マルサンヌはローヌ地方で、混醸で使われることも多い一般的な品種ですが、このエリアでは使用禁止されています
ローヌ渓谷は、原産地呼称のついたA.O.C.ワインの生産量がボルドーに次いでフランス2位です
北部ローヌも南部ローヌも赤ワインの生産が中心の産地です
日本でも人気のシラーやグルナッシュ主体のワインが多く生産されています
華やかなブルゴーニュの影に隠れがちな産地ですが、北部のコート・ロティや南部のシャトーヌフ・デュ・パブなど
世界的に注目を集めている高級ワインも存在しています
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