【ジュラ地方】
ジュラ地方は、フランス東部、ジュラ山脈の西側、ブルゴーニュ地方の東側に広がる産地です
その為、品種や地質はブルゴーニュ地方との類似性がみられます
主要ブドウ品種は、
白はサヴァニャン(=ナチュレ)、シャルドネ(=ムロン・ダルボワ)
黒はプールサール、トゥルソー、ピノ・ノワール(=グロ・ノワリアン)
シャルドネ、ピノ・ノワールのこの地での呼び名は重要です
サヴァニャンは、十字軍の時代にオーストリアから渡来したと言われています
プールサール、トゥルソーはジュラ地方原産の品種です
【ヴァン・ジョーヌとヴァン・ド・パイユ】
赤、ロゼ、白ワインの他に特殊な醸造方法を要する、ヴァン・ジョーヌ(=黄ワイン)やヴァン・ド・パイユ(=藁ワイン)が造られており、これがジュラ地方の大きな特徴です
ヴァン・ジョーヌとは、サヴァニャン種から造られる白ワインの一種です
サヴァニャンというブドウ品種は、ほぼジュラ地方でのみ栽培されている固有品種です
成熟が遅く、遅い時には12月頃まで樹に残し成熟させることがあります
果皮が厚く酸も糖度もしっかりと備えており、長期熟成ワインを生み出す要素を持ち合わせています
フランス国内でも非常にユニークなヴァン・ジョーヌというこのワインの特異性は、その造り方にあります
しっかり完熟したサヴァニャン(=ナチュレ)を収穫し、白ワインの醸造方法と同じ行程で、除梗・破砕した後、圧搾し発酵させます
完熟したブドウの糖分が完全にアルコールに変わるまで発酵させるので極辛口のワインに仕上がります
出来立てのワインは、収穫翌年から6年目の12月15日までオーク樽で熟成させます
その間の60ヶ月以上はウイヤージュ(目減り分の補充)、およびスーティラージュ(澱引き)を一切しません
つまり、樽に入れっぱなしで熟成させるのです
その結果、樽の3分の1程の量にまでワインは減ります
放置されることによって樽の中のワインの表面には、酵母(産膜酵母)による皮膜が形成されます
この皮膜はフルール・デュ・ヴァン(フランス語で「ワインの花」という意味)と呼ばれ、膜を張ったワインが適度に空気に触れることでワインは少しずつ酸化熟成し、黄色みを帯び、独特の風味が生まれます
出来上がったヴァン・ジョーヌはクラヴランと呼ばれるこの地方特有の620mlの瓶に詰められます
ヴァン・ド・パイユとは、ジュラ地方特有のワインで、ローヌ北部のエルミタージュでも少量造られています
《ヴァン》はワイン、《パイユ》は藁(わら)を意味します
収穫したブドウを藁の上で乾燥させることで糖度を高め、それを使って造られる甘口ワインです
ブドウ品種は、サヴァニャン、シャルドネ、プールサール、トゥルソーの4品種
熟成は、最低3年目の11月15日までの熟成が義務付けられています(うち樽熟成18カ月以上)
出来上がったヴァン・ド・パイユはポ(Pots)と呼ばれる地方特有の375mlの瓶に詰められます
【ジュラ地方の主なA.O.C.】
ジュラ地方の主なA.O.C.は、
レトワールは、白、黄色(=サヴァニャン100%)、藁が認められています
ブドウ品種は、サヴァニャンとシャルドネ主体で造られます
シャトー・シャロンは、黄色ワイン(=サヴァニャン100%)のみが認められています
ブルゴーニュのムルソーや、ボルドーのシャトー・ディケム等と並んでフランスの5大白ワインの一つにあげられる偉大なワインです
マクヴァン・デュ・ジュラはV.D.L.を生産するA.O.Cです
V.D.L.(ヴァン・ド・リキュール)とは、まだ発酵させていないぶどう果汁にアルコールを加えてつくるフォーティファイドワインの一種です
世界3大フォーティファイドワインとして、スペインのシェリー、ポルトガルのポートワイン、マディラワインが有名ですが、フランスでもつくられています
一方、V.D.N.(ヴァン・ドゥ・ナチュレル)とは、ワインの醸造過程でアルコールを添加して、アルコール度数を高めたワインです
【サヴォワ地方】
サヴォワ地方は、スイス、イタリアと国境を接するアルプス山麓にある産地です
スイス国境にあるレマン湖からイゼール河流域の山間部に位置し、土着品種を中心に造られる軽快な白ワインが生産の大半を占めています
主要ブドウ品種は、
白はジャケール、アルテス(=ルーセット)、シャスラ、グランジェ、ルーサンヌ
黒はモンドゥーズ、ガメイ、ピノ・ノワール
ジャケールは、サヴォワ地方で最も栽培面積が広い品種で、全体50%を占めます
アルテス(=ルーセット)は、地中海東部にあるキプロ島から伝わった品種と言われています
モンドゥーズは、サヴォワ地方を代表する黒ブドウ品種で、色が濃く酸が強いため、長期熟成のポテンシャルを持ちます
【サヴォワ地方の主なA.O.C.】
サヴォワ地方の主なA.O.C.は、
ヴァン・ド・サヴォワ・クレピーは、シャスラ100%で造られる白ワインのみのA.O.Cです
シャスラはもともと食用として地元で栽培されていた種類で、熟成の時期が早く、果汁が多くて香りが強い事が特徴です
セイセルは、アルテス100%で造られる白ワインのみのA.O.Cです
日本では、セイセルの中で独立したA.O.C.
セイセル・ムスーという瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインが一般的です
ジュラ・サヴォワ地方は、サヴァニャンを使い6年熟成させるヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)
また、ポ(Pots)と呼ばれる瓶で生産される、甘口ヴァン・ド・パイユ(乾燥藁ワイン)など、独特の個性を持ったワインが特徴的です
黒ブドウはプールサールやトゥルソーが盛んに栽培され、牛乳から作られるハードタイプのコンテチーズと合わせられるなど、「山ワイン」としての魅力も持っています
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