【独学】アメリカワイン ソムリエ試験対策

ソムリエ試験対策

概要

アメリカの太平洋地域は北から南に流れるカリフォルニア海流が水温の低い寒流である影響で、海に近いほど冷涼で、内陸に入るほど暑く乾燥した気候となります

California州中部からOregon州にかけての太平洋岸には海岸山脈があり、冷たい海からの影響を緩和しています

またNew York州の大西洋岸では冬の寒さは厳しく、夏は蒸し暑いです

現在、アメリカのほとんどの州でワインが造られており、生産量も拡大しています

California州が全生産量の80%を占め、また国内の約11,000軒あるワイナリーのうち約43%を占めています

年間生産量は1位California州2位Washington州3位New York州4位Oregon州の順番です

アメリカは約3億3千万人を超える世界第3位の人口をもち、国内ワイン消費量は約3,785万hLと世界最大です

2019年に近年で初めて減少しましたが、2020年のコロナ禍でアルコール飲料の家庭内消費が増したことにより再び増加傾向を示しています

近年の市場動向としては、ネット販売やワイナリーから消費者への直接販売(=ダイレクト・シップメント)が伸びています

現在、アメリカのワイン市場構成は、西海岸ではCaliforniaを中心とするアメリカ産ワインが主流で、東海岸ではフランス、イタリア等、ヨーロッパ産ワインが主流となっています

歴史

1492年、クリストファー・コロンブスによりアメリカ大陸が発見されました

これ以降ヨーロッパ諸国による植民地化が進んでいきます

アメリカでの最初のワイン造りは18世紀頃

教会の修道士たちによって、キリスト教のミサ用のワインとして造ったのが始まりと言われています

1776年、イギリスの13植民地(後の東部13州)が独立を宣言し、アメリカ合衆国が誕生しました

1848年、メキシコ戦争に勝利し、Californiaがアメリカの領土の一部となりました

19世紀後半、西部はゴールド・ラッシュによる人口の急増で、ワイン需要が拡大しました

また、この頃フィロキセラ被害がSonoma(ソノマ)で最初に発生し、その後、Labrusca(ラブルスカ)系を台木にした接木苗の開発が進みました

1920年(1920年~33年)禁酒法の制定が行われ、これによりワイン産業は大打撃を受けました

1934年Wine Institute(ワイン・インスティテュート:ワイン協会)がCaliforniaに設立、California大学Davis(デイヴィス)校にブドウ栽培、ワイン醸造科が設立されました

この2つの機関は共同で研究・開発を進め、ワイン産業の発展に大きく貢献しました

特に、温度コントロール装置付きのステンレススティール・タンクは、Californiaで開発され、世界中に広まりました

1976年パリ・テイスティング(=パリスの審判)で、Californiaのワインがフランスのワインより優れているという“審判”が下り、全世界のワイン界に大激震が走りました

1978年、アペラシオンの規定を含む現在のワイン法の原型が形成されました

主要品種

主要白ブドウ品種は、Chardonnay、French Colombard(フレンチ・コロンバール)、Pinot Gris、Muscat of Alexandria(マスカット・オブ・アレキサンドリア)、Riesling

French Colombard(フレンチ・コロンバール)は、フランス・Cognac(コニャック)地方原産で、主に大量生産型の白ワインとスパークリングワインの原料となります

主要黒ブドウ品種は、Cabernet Sauvignon、Zinfandel(=Primitivo プリミティーヴォ)、Pinot Noir、Merlot、Grenache、Syrah、Barbera、Petite Sirah、Ruby Cabernet(=Cabernet Sauvignon×Carignan)

Zinfandelは、イタリア南部のPuglia(プーリア)州で生産される黒ブドウ品種です

Petite Sirahは、アメリカ及び南米で栽培されている、色が濃くタンニンの強いワインを造る黒ブドウ品種です

以前はポルトタイプの酒精強化ワインに使われていましたが、近年はZinfandel等にブレンドされることが多い品種です

Ruby Cabernet(=Cabernet Sauvignon×Carignan)は、Californiaで開発された交配品種です

西部太平洋岸では、Chardonnay、Pinot Gris、Cabernet Sauvignon、Merlot等が多く栽培されていますが、冷涼な地区ではPinot Noir、Riesling等の栽培割合が大きいです

東部大西洋岸では、Riesling、Cabernet Franc等の冷涼な気候向きの品種が多く栽培されています

ワイン法

1789年以来、酒類の製造と徴税に関する法律は、アメリカ財務省の管轄下にあります

1933年に禁酒法が撤廃された後、1935年に再び酒類の製造と税制に関する法律が規定されました

1978年の法改定により、アペラシオンの規定を含む現在のワイン法の原型が形成されました

2003年よりT.T.B.(アルコール・タバコ課税および商業取引管理局)が、ワインの製造方法を規定し、品質を管理しています

A.V.A.

政府認定ブドウ栽培地域を表す、A.V.A.(アメリカン・ヴィティカルチュラル・エリアズ)は、ヨーロッパの原産地呼称制度とは異なり、栽培、醸造方法、品種等の規定はなく、産地の境界線を定めるのみのものです

現在のところ、アメリカのワイン法に格付けは存在しないので、A.V.A.間に優劣はありません

しかし、近年ではより小規模で特殊な地理的、気候的条件をもった地区の存在が明らかになるにつれて、既存のA.V.A.の中に新しく小規模なA.V.A.が認定されるといった傾向にあります

ラベル表記規制

アメリカワイン法では、ブドウ品種名、産地名、収穫年などをラベル表示できる含有比率が決められています

国の規制とは別にCalifornia州Oregon州は独自の規制を行っています

Oregon州はアメリカで最も厳しい規制を設けています

その他の規制

Estate Bottled(エステイト・ボトルド)は“生産者元詰め”を意味します

Estate Bottled(エステイト・ボトルド)を表記するには、瓶詰をするワイナリーと、原料ブドウを栽培する畑が同一のA.V.A.に位置しなければなりません

(=ワインを生産する為のブドウを、全てワイナリーの所有あるいは管理するブドウ畑で栽培し、そのワイナリーで瓶詰まで行うことが条件)

Varietal Wine(ヴァラエタル・ワイン)は、ブドウ品種名をラベルに表示したワインのこと

(例:Chardonnay、Pinot Noir)

Semi-Generic Wine(セミ・ジェネリック・ワイン)は、ワイン名の一部にヨーロッパの有名ワイン産地名を使ったワインのこと

これについては、EUとの協議の結果2006年から指定されたSemi-Generic名称の使用が禁止となっています

(例:Champagne、Chablis)

Meritage Wine(メリテージ・ワイン)は、Bordeaux原産のブドウ品種をブレンドしたBordeauxタイプの高品質ワインのこと

MeritageはMerit(メリット)とHeritage(ヘリティッジ 遺産)を合わせた造語です

(例:Opus One オーパス・ワン)

ワイン産地

アメリカでは現在、ほとんどの州でワインが造られていますが、California州、Washington州、Oregon州、New York州、Virginia州が代表的な産地です

California州には、5,900軒を超えるワイナリーがあり、アメリカワイン総生産量の約80%を生産しています

また、Californiaワインの国内小売金額は約436億ドル、輸出金額は約13.6億ドルでアメリカワイン輸出金額の95%を占めます

California州は別テーマに分けて詳しく解説していきます!

Washington州

Washington州は、ワイン産地としての歴史は浅いですが、急速に成長しており、アメリカのワイン生産量の約4%を占めます

最大のA.V.A.は州内の大半を占める、Cascade山脈の東側に位置するColumbia Valley(コロンビア・ヴァレー)は、ブドウ生産量の90%を占めます

州都Seattle(シアトル)は、マイクロソフト、Amazon、スターバックスなどアメリカを代表する企業の本拠地があり、任天堂のアメリカ本社もあります

太平洋から吹く湿った風はCascade山脈を越えると乾燥した風となり、内陸に吹き込みます

その為、内陸にあるColumbia Valleyは非常に乾燥し寒暖差の大きい大陸性気候から、半砂漠気候、砂漠気候となり、ブドウ栽培には灌漑が必要です

ブドウ栽培面積は約2.4万ha、ワイン生産量は約160万hLで、栽培面積、生産量はともにCalifornia州に次ぎ全米2位で、ワイナリーの数は過去10年で2倍以上に増えています

フランスのChampagne地方が栽培面積3.3万ha、ワイン生産量210万hLですので、全米2位の規模ですが、比較すると小規模な産地といえると思います

主要ブドウ品種

白は、Chardonnay(全ブドウ中2位)、Riesling(全ブドウ中3位)

黒は、Cabernet Sauvignon(全ブドウ中1位)、Merlot(全ブドウ中4位)です

Oregon州

Oregon州のワイン産地は、太平洋沿いの海岸山脈とCascade山脈の間にあるWillamette Valley(ウィラメット・ヴァレー)(=州内最大のA.V.A.)とその南側にある、Southern Oregon(サザン・オレゴン)及びWashington州との境界を流れるColumbia河流域にあります

Oregon州のワインが世界的に認められるきっかけのエピソードとして、1980年にフランスで行われたBourgogneとOregonのPinot Noirの比較テイスティングがあげられます

このテイスティングでThe Eyrie Vineyards(ジ・アイリー・ヴィンヤーズ)の“Pinot Noir 1975“が第2位になりました

ブドウ栽培面積は約1.5万ha、ワイン生産量は約51万hLです

この数字はフランスAlsace地方(ブドウ栽培面積約1.6万ha、ワイン生産量約98万hL)と似ています

年間生産量5,000ケース以下の小規模な家族経営ワイナリーが全体の75%を占めています

近年は冷涼気候から生まれる高品質Pinot Noirの産地として世界的に注目を集めており、栽培面積は約59%を占めています

他には全ブドウ中2位のPinot Gris、3位のChardonnayなどが栽培されています

New York州

New York州は東側のLong Island(ロング・アイランド)から西側のPennsylvania(ペンシルヴァニア)州との境界まで、東西約800kmにも及びます

州内には現在471軒のワイナリーがあります

初めてブドウが植えられたのは17世紀中頃で、オランダ人によって現在のManhattan(マンハッタン)に植樹されました

ブドウ栽培面積は約1.4万ha、ワイン生産量は約107万hLです

主要品種は、白はRiesling、Chardonnay、Niagaraなど

黒は、Cabernet Franc、Merlot、Baco Noir(バコ・ノワール)などです

Baco Noir(バコ・ノワール)は、フランス白ブドウのフォル・ブランシュ種とアメリカ黒ブドウのヴィティスリパリア種を交配して造りだしたハイブリッド種です

寒さの厳しいNew York州では、20世紀に入り数々のフレンチ・アメリカン交配品種が開発され持ち込まれました

Virginia州

Virginia州は大西洋岸の南部に位置し、最初に独立した東部13州のうちの1つで、州都はRichmond(リッチモンド)です

初代大統領のGeorge Washington(ジョージ・ワシントン)の出身州でもあります

1600年代初頭よりイギリスがヨーロッパから持ち込んだVitis Vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)種のワイン用ブドウは、厳しい気候や病害のためこの地に根付きませんでした

1820年代に、Richmond(リッチモンド)でDaniel Norton(ダニエル・ノートン)博士が交配に成功したNorton種から高品質なワインが造られるようになりました

太平洋岸の産地よりも降雨量が多く夏も穏やかな気候であることから、ヨーロッパ等のオールドワールド的スタイルを持つワインができます

Bordeauxブレンドの赤ワインや、エレガントなViognier(ヴィオニエ)も注目を集めています

ワイナリーは1995年の46軒から、2021年では約300軒までに増加しています

ブドウ栽培面積は約0.1万ha、ワイン生産量は約8.9万hLです

主要品種は、白はChardonnay、Viognier、黒は、Cabernet Franc、Merlotなどです

おわり

アメリカワインは、ニューワールドのなかでも品質が高く、世界が注目する銘柄も多くあります

California州の気候は温暖で、ブドウが完熟しやすい環境にあるため、ブドウの味をしっかりと味わえるワインができます

また、New York州や、Virginia州のように厳しい環境の中で、それに態勢をもつブドウ品種の開発を行い、国際的に評価を獲得したワインもあります

参考文献:ソムリエ協会教本2023

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