米とは
米とは稲の種実にあたる部分を指します
米は小麦や、トウモロコシと共に世界三大穀物に数えられており、その品種は世界に1000種以上あるとされています
稲の起源・分類
稲作の起源は諸説あるとされていますが、約6000年~7000年前に、インドのアッサム地方で始まったとされる説が有力です
水田による稲作が日本に伝来したのは、約3000年前とされており、日本最古の水田は佐賀県唐津市の菜畑遺跡のもので、約2500~2900年前のものと考えられています
植物学上で、稲は大きくアジアイネとアフリカイネに大別されます
日本で栽培されている品種は、主にジャポニカ種であり、世界でつくられる米の約20%を占めます
また、世界でつくられる米の約80%を占めるのがインディカ米です
稲の栽培方法は、日本で主流の田んぼで栽培する水稲(すいとう)と、アジアやアフリカで主流の畑で栽培する陸稲(りくとう)に大別されます
作物は成熟期間により、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)に分類されます
早生は収穫期の早い作物を指し、晩生(おくて)は収穫時期の遅い作物を指します
デンプンの違いにより、うるち米ともち米に大別されます
うるち米は、日本で最も流通しており、日本酒の原料としても使用されます
一方、もち米は、餅や赤飯などをつくる際に使用され、日本酒原料の一部として使用されることもあります
稲の栽培方法
一般的な稲の栽培方法
米の構造・成分
米の中心部が白濁して見える品種が存在し、この部分を「心白」と呼びます
心白はデンプン構造が疎(=まばら)であり、その隙間が広いため、光が当たると乱反射し白濁して見えます
心白があることで、麹菌の菌糸が中心まで繁殖しやすいメリットがありますが、反面崩れやすく、削りにくいというデメリットもあります
心白は断面の形状により「無心白」「点状心白」「線状心白」「眼状心白」「腹白状心白」などに分類されます
一般的なものは、「眼状心白」で、削りすぎると砕けてしまう構造になっています
五百万石は「眼状心白」で代表的です
一方、「点状心白」や「線状心白」は削りやすい構造になっています
山田錦は「線状心白」で代表的です
米の主な成分は炭水化物(デンプン)であり、玄米中に含まれる割合は70~75%です
次に多いのがタンパク質で、約7~8%、脂質は約2%、灰分(いわゆるミネラル分)は約1%を占めます
酒造好適米
農作物検査法で規定された醸造用玄米は、通称酒造好適米と呼ばれ、現在約120品種あるとされていますが、山田錦と五百万石で全体の約60%を占めます
酒造好適米に求められる条件として、「大粒である」「適切な形状の心白がある」「タンパク質、脂質が少ない」「吸水率が良い」といったことがあげられます
米の外側には「タンパク質」や「脂質」など日本酒を造る上で悪い影響をおよぼす可能性のある物質が含まれています
その為、外側部分はある程度削り取っていきます(精米)
その際にお米が割れてしまうと外側部分を適切に削り取ることができない為、大粒で割れにくい酒米が好まれます
心白はすき間が多く空いているため、適切な形状の心白は「麹造り」において麹菌を米に食い込ませやすく、効率的にお米を溶かす(糖化)ことができます
また良い酒米は外側が硬く、内側が軟らかい(外硬内軟(がいこうないなん))という特徴を持っています
外硬内軟であることで、麹を食い込ませやすく、また日本酒を造る上で好ましい成分をお米の内側に蓄えることができます
醸造用玄米以外のもので、日本酒の原料として使用される場合は飯米、飯用一般米などと呼ばれます
日本酒の原料として使用される米を総称して酒米と呼ぶ場合もあります
酒造好適米は、稲穂の背丈が非常に高く台風シーズンなどは特にリスクがあります
(コシヒカリやササニシキは1m20cm前後だが、山田錦は1m50cmを超えるものもあります)
その為、丈夫な稲を育てるため、栄養分を含んだ土壌、苗の間隔を空け日当たりや通気性を良くする、他にも朝晩の寒暖差や、栽培技術など飯用一般米と比べると、収量が少ないにもかかわらず生産コストは高くなります
醸造用玄米の品種の生産量は、1位山田錦、2位五百万石、3位美山錦、4位雄町(おまち)、5位秋田酒こまちです
1位と2位の品種で全体の約60%を占めています
米の文化
米を食することで力を宿す意味を持つ「力餅」
子供が生まれた際に供える「産立飯(うぶたてめし)」
米の音を聞かせて病人を元気づける「振り米」
米の漢字を分解すると八十八になることから88歳を祝う「米寿」
米に関する文化は現代でも多く継承されています
水に関すること
伏流水とは?地下水の一種で河川下などの浅い地層を流れます
硬度とは?水中に含まれるミネラル含有量の目安指標で、マグネシウムとカルシウムの合計含有量を表します(ドイツ硬度1dH=アメリカ硬度17.8ppm)
日本酒造りの水の条件
日本酒造りに使用する酒造用水は、総米重量の30~50倍程度必要です
また、日本酒成分中の約80%を水分が占めます
酒造用水は、醸造用水と瓶詰用水に分けられます
酒造用水に必要な成分
酒造用水に不要な成分
灘の宮水とは
兵庫県西宮市の沿岸部で湧き出る井戸水です
ミネラル分が豊富な「硬水」で酵母の働きを活発にする、リン、カリウム、カルシウムが多く含まれているため、アルコール発酵が活発になり、高アルコール、甘味の少ない辛口テイストになりやすいです
伏見の御香水とは
京都市伏見区で採集される井戸水です
水質は「軟水」で“灘の男酒”に対して“伏見の女酒”と称されています
ミネラル含有量が少ないため、アルコール発酵が穏やかで、低アルコール、甘味の残ったテイストになりやすいです
麹菌
麹菌はカビの一種で、アスペルギルス属に分類されます
麹菌の生成する各種酵素が米のデンプンを糖類に分解し、酵母の栄養源を供給し、旨味成分(アミノ酸など)を生成します
麹カビ属に分類され、日本酒、焼酎製造に使用するのは「黄色麹菌」「黒麹菌」「白麹菌」です
黄色麹菌は、別名アスペルギルス・オリゼと呼ばれ、主に日本酒造りに使用されます
糖化力が強いのが特徴です
黒麹菌は、別名アスペルギルス・リュウキュウエンシス(アスペルギルス・アワモリ)と呼ばれ、主に泡盛造りに使用されます
白麹菌は、別名アスペルギルス・カワチと呼ばれ、主に(泡盛以外の)焼酎造りに使用されます
黒麴菌、白麴菌ともにクエン酸を大量に生成します
酵母
酵母は糖分をアルコールと二酸化炭素に変える働きをする微生物です
日本酒用酵母は、低温下でも活躍でき、高濃度のアルコールと優れた香気を生成するものが選ばれます(近年では、華やかな香気成分を生成する酵母が多数開発されています)
協会酵母とは、日本醸造協会で頒布(はんぷ)している日本酒、焼酎およびワインの酵母を指します(正式には「きょうかい酵母」と記す)
現在最も多く使用されている「きょうかい酵母」は「きょうかい7号」です(別名:真澄酵母)
吟醸用酵母の代表とされるのが「きょうかい9号」です
乳酸菌
乳酸菌はヨーグルト、チーズ、乳酸飲料、キムチなど様々な発酵食品の製造に用いられています
糖類を乳酸に変えるとともに、食品、飲料を酸性化することで、腐敗や食中毒の原因となる微生物の繁殖を防止します
※参考文献 新訂 日本酒の基
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